お風呂に入り忘れて死ぬように眠り込んだ僕を、消し忘れていた目覚まし時計が起こす。
うっすらと差し込む冬の光に誘われ、僕は目覚めた。
ミルク色の光はやけに綺麗で、僕はひさびさにベランダに出る気になった。
そう、ベランダで立つことも唄うことも忘れるぐらい、今週は忙しかったから。
濡れた土の上に降り注ぐ、暖かな光。
ふと僕は、いま眼の前落ちた雫を眼で追いかけた。
部屋の中では気がつかなかったけど、本当に微かな白い雨が降っているのだ。
日差しの中に降り注ぐ、柔らかな水のベール。
狐たちが嫁入りをする、と表現したのもわかる気がする。
静かで神々しい、冬の雨に相応しい光景だった。
軒下に守られて、手を伸ばしても雨に触れることは叶わなかった。
散歩に行こうか、と考えてふとあの人のことを思った。
あの人にこの風景を見せてあげたいと思った。
この暖かさを、光を、雨を、贈りたいと思った。
たぶんいまでも夢を追いかけている、あの人に。
それでも愛することを忘れられない、あの人に。
僕に信頼という言葉を教えてくれた、あの人に。
それでこうして僕は文章をしたため、ネットの海の隙間にこうして流す。
どうか僕が狐たちから貰ったこの温かさが、流れ流れて君のところに届きますように。
そう、静かに祈り、願いながら。
2007年12月23日記す