葉月が終わり、長月になった。
暑さも和らぎ、暦の上だけではなく、秋の気配を感じるようになった。
私は夏に撮影した写真を整理していた。
まるで、遠い昔の想い出を懐かしむように。
今年の夏は彼と長野へと旅をした。
箱根、本栖湖、諏訪湖、高遠、安曇野、松本と巡った。
彼との旅行は初めてだ。
車で長野県を巡ることも初めてで、観るものも食べるものも初めてばかりで楽しい旅だった。
こうして、旅での写真を見返していると、不思議な心地に襲われる。
私も彼も、写真の中にはいない。
だけど、確かに一緒に過ごした時間はそこにあった。
流れた時間は二人の間に積もり、胸の中で確かな想い出となっている。
旅を重ねるように、共に時間を重ねたい。
そう思える人に出逢える確率は高くはないだろう。
その僅かな確率の中で、私と彼は出会った。
その幸運を、砂糖菓子を見つけた子どものように喜ぶ私がいる。
二人で共に過ごした夏が終わり、秋が始まる。
そして秋が過ぎ、冬を迎え、春の訪れを待ちながら、季節を重ねていくだろう。
巡る季節の中で、私たちは終わりのない旅を始めようとしている。
共に時を過ごせるという幸運を大切に、人生という名の旅路を重ねたいと思っている。