Hazuki Natuno

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やっぱり、人が好き

やっぱり、人が好き

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人を撮影することが好きだ。
好きで好きで、しょうがない。
なんでこんなに人物を撮影することが好きなのだと思うけれど、理由がわからない。
風景も建築も食べ物も、撮ることそのものが好きだけれど、人を撮るのが1番好きだ。

こんなに人を好きなのに、理由が良くわからない。
敢えて原点をあげるなら、24歳のときのトルコ旅行がきっかけだと思う。
いまから18年前の夏、突然トルコに行きたくなった。
小さなバックパックにカメラとフィルム70本と最低限の衣服を詰めて、トルコに3週間の旅に出た。
本当になにも予約しないで、トルコのアタテュルク国際空港についてから、その日の宿を手配する行き当たりばったりっぷりで、イスタンブール、サフランボル、ゾングルダック、アンカラ、エフェスとあちこち周った。
サフランボルで仲良くなったトルコ人の家族に誘われて、ゾングルダックの彼らの家に遊びにいったら39度の熱を出して、看護されたこともあった。
首都アンカラで仲良くなったホテルマンの男性に「どこ行きたい?案内するよ」と申し出られて、彼の案内でアンカラ郊外のごみ処理場に取材に行った。
トルコから船で、ギリシャのロードス島とサモス島にも行った。
移動はすべてバスで、インターネットは現地では使えなかった。
好奇心で携帯を買ったら、壊れた携帯を売られてボラれた。

いろいろあったが、トルコでは良いことばかりで、出会ったすべての人に親切にしていただいた。
トルコ語を習うのが楽しくて、いつも覚えたてのトルコ語で話しかけた。

「チェケビリム ミイム?(写真撮らせてください)」

これが私が旅で1番良く話したトルコ語だ。
誰にでも話しかけて、どんどん撮らせてもらった。
本当に楽しかった。
いまでも、「メルハバ!(こんにちは)」とこれだけは言える。

この24歳の旅で撮影した約2000枚の写真はほとんど発表したことがない。
まだアマチュアだったころに、5枚ほどグループ展で展示しただけだ。
すごく楽しくて、幸せだったあの時間をちゃんとプリントしたくて、フィルムのデジタル化に取り組むことにした。
何枚スキャンニングして、レタッチする必要があるのか考えると気が遠くなるけれど、あの幸せな時間と向きあえることそのものが幸福だとも思う。

人を撮ることは時に傷つき、傷つけもする。
コミュニケーションは繊細で、愛情表現のつもりが暴力になることもある。
写真は愛であり、凶器でもある。
だからこそ、人を撮らせてもらえるありがたさを胸に、今日も撮りたいと思う。