Hazuki Natuno

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禅の精神にたちかえる 〜鎌倉の浄智寺で行われたZen2.0オンラインイベントに参加して感じたこと〜

禅の精神にたちかえる 〜鎌倉の浄智寺で行われたZen2.0オンラインイベントに参加して感じたこと〜

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こんにちは、夏野葉月です。
2020年6月27日、鎌倉の浄智寺から配信されたオンラインイベント「Zen2.0 〜禅の精神にたちかえる〜」に参加しました。
私の体験した「禅×マインドフルネス×鎌倉」なオンラインイベントをリポートしてみたいと思います。

1:Zen2.0とは?

Zen2.0とは、一般社団法人Zen2.0が毎年秋に鎌倉で開催している禅とマインドフルネスの国際カンファレンスです。
2017年に第1回目が開催されました。
宗教者・学者・経営者など様々な登壇者が登壇し、参加者と共にヨガや瞑想や対話を通じて、心のあり方を学ぶイベントです。

Zen2.0公式サイトhttps://zen20.jp/

 
今年のZen2.0は、新型コロナの影響により全てオンラインイベントとして開催されることになりました。
5月にプレイベントが行われ、6・7・8月にも毎月イベントがあり、9月に本番のイベントが行われます。

私は2018年に行われたZen2.0で、広報のボランティアスタッフとして参加させていただきました。
2019年は小笠原諸島に移住したこともあって、全く参加できなかったのですが、今年はオンラインなので参加できることになりました。
ただ、スタッフと言いつつも6月のイベントは準備にあまり拘れなかったので、一参加者として「どんなイベントになるのかな?」と非常に楽しみでした。

2:オープニングは浄智寺上空のドローン映像と読経から

今回のイベントはオンラインテレビ会議システム「Zoom」で行われました。
私は15時から開始の少し前、14時50分ごろに入室しました。
深い緑を基調としたイメージ映像と坐禅のための座り方の動画が流れて、個人的にわくわくしてきました。

 

そして、イベント本番がスタート。
北鎌倉の浄智寺上空を眺めるドローンによる映像がゆっくりと下降し、浄智寺本堂にすうっとズームイン。

そのまま、ゆっくりとした声で、浄智寺住職、朝比奈惠温さんによる読経が始まりました。
生ではなく、パソコン越しに聴く読経はどことなく新鮮で、それでいて神妙な気持ちになりました。


 

3:浄智寺住職、朝比奈惠温さんのお話し

読経後はZen2.0共同代表の三木康司さんと宍戸幹央さんの挨拶の後、朝比奈惠温さんのお話が始まりました。
ライブ感が伝わるように、イベントでのお話を書き起こしてみたいと思います。

朝比奈:今年はいろんなことがありました。
今年の1月ぐらいにはこれから大変な病気が流行るんだよとわかっていました。
だが、まだ一部の出来事だから油断していました。でもそんな場合ではなくなりました。
では、私たちはどのような心持でいれば良いのか。
そんなときこそ、慌ててはいけないから「腹を据える」ということが大切になります。
そして、禅の大切さがつくづく痛感されました。

宍戸:新型コロナによって、身体性や生命の重要性が感じられるようになりましたね。
また地球が綺麗になっているという側面を感じたときになにを考えなければいけないのか。
皆さん、いかがでしょうか。本堂に来るまでの風景になにを感じたでしょうか。

朝比奈:例えば、建長寺や円覚寺は、鎌倉時代に谷戸を切り開いてできた訳です。
なにもないときに多くの人が切り開いて、七堂伽藍を整えて作りました。
そのために、自然を破壊するとまではいけないだろうけれど、樹を切ったり、排泄物を出したりした。
大勢の人が過ごすためには、自然を変えることも必要になる。
燃料のことが、木を切って炭になることから離れて、変わった。
木を切り過ぎることで自然が人間に牙を向いたこともあっただろう。
人間が過剰なことをすると、自然は牙を向く。
新型コロナと軽々に結びつけられないかもしれないけれど、そうしたこともあるかもしれません。

宍戸:禅には研ぎ澄ましていくシンプルさがあり、そうしたことに引かれる人もいるのではないでしょうか。

朝比奈:禅はいらないものを捨て、研ぎ澄ましていくのが基本です。
修行に入る前には不必要なものを捨てていく。
そういうシンプルな暮らしが当たり前にならないと、修行にならない。
禅の精神とは「無駄を省く」。
食事も生活も、無駄を省くために工夫をいたしました。
とにかくごみが出ないようなことを最低限やっていました。

宍戸:物と共に情報が溢れていて、捨てていく中で大切なものに気づいていく側面もあるでしょう。
そして同時に新しいものに引き継がれていく。
そういう観点もあるのではないでしょうか。

朝比奈:我々の修行の中では、「気づくこと」が非常に大切です。
修行生活における師と弟子たちのやりとりで、大切な気づきが沢山ある。
いま、どうしてこうしているのか。
呼吸も含め、こうしている「自己」に気づくことが一つの修行です。
そうしたことが混沌の中で、大事なことなのではないかと思います。

宍戸:そんなことを考える中で、仏教の教えは大切だと思います。
浄智寺の御本尊のご説明も願えますか。

朝比奈:浄智寺の本堂にある御本尊についてご説明します。
皆さんの方から見て、左側が阿弥陀様、中央がお釈迦様、右側が弥勒様です。
普通は弥勒は菩薩像なのだけれど、浄智寺の場合は如来像になっています。
56億7千万年の未来からきている如来様のお姿でいらしていただいています。

宍戸:56億7千万年という大きな時間のスケールにありながら、いまこの瞬間を大事にしていく。
その二面性とつながりを感じるのが禅であり、マインドフルネスでもあると思うのですが、そのあたりのこともお話しいただけますか。

朝比奈:禅の修行だと「いま、どうしろ」とお話しいただけます。
例えば、末期の一呼吸のように、一呼吸一呼吸を大切にしなさいと教えられます。
その過去から未来に行く真ん中には「いま」があり、「自分」がいる。
そこを大事にしなければいけません。

宍戸:一人ではない、分断されてないという禅の意味合いについてお話しいただけますか。

朝比奈:同じような立場の仲間がいて、だから修行はなんとか出来ます。
だけど「俺なんか一人でできる」と威張っている人もいます。
だけど、誰かのおかげさまで一日一日が成り立って行く。
だからこそ、修行は集団生活なのだと思います。
いろんな人のおかげを持って、自分が生かされている。
こういう世の中によって、そういうことに気づかされたのではないでしょうか。

三木:我々も気づかされました。
またインターネットというツールによって、繋がりが広まり深まったとも言えます。

宍戸:いま、私たちはコロナというキーワードで、繋がっています。
国が違えど、苦しみや不安は一緒である。
今回のイベントはオンラインで海外の方も参加いただけているのも、意味があることだと思います。
この大変な時期だからこそ、禅の精神を学んでいきたいと思っています。

朝比奈:どうしても皆さん不安ですよね。
いままで出来たことができなくなってしまった訳ですから。
でも、できることをしましょう。
恐れても仕方ないけれど、「私は見ない」という人もいるけれど、情報に振り回されないで、正しく恐れましょう。
そして、きちんと呼吸を整えましょう。
「腹に据える」という精神が大事です。
禅は修行者によって、時代の苦しみを乗り越えることができた。
ここは一つ、私たちも禅の呼吸をして、情報を咀嚼して、「自分がなにをすべきか」判断していきたいと思います。

宍戸:こうしたときに禅の呼吸や姿勢は大切なのかと思います。

4:オンラインで坐禅体験

こうした朝比奈さんのお話しの後に、オンラインによる座禅体験が行われました。
朝比奈さんから、坐禅の心得が参加者の皆さまにお話しされました。

朝比奈:禅の呼吸は「吐いて、吸う」ことが基本です。
肝心なのは、ゆっくりと吐いて吸うこと。
息を吐き切って、しっかり吐くことが大切です。
ゆっくり吐いていくと、へそのあたりが押し出されます。
呼吸を続けていくと、自分でない周りのもの、仲間や先輩、そうした人からも気がつくことがある。
呼吸や所作ができていると、より良いものに変わっていく。
そうしたものを日々怠ってはいけない。
まずは姿勢、調身で身体を心がけること。
お尻を座布団で少し上げて、三点で体を支えるようにします。
手は器のような形に作って、お臍の上におきます。
頭はまっ過ぎにして、目線は1mほどのところを薄く眼を開いてみます。
半眼のような目線で、目の前を見ます。
鼻から呼吸をゆっくり吐いて、吐いて吐いて、これ以上履けないという息を吐いたら、息をたっぷり吸い込んでいきます。
吐き出すときに、下っ腹にしっかり力を込めます。
調身、調息を大切にしてください。
坐禅の最中は、吐いて吸うことに専念していただきます。
正座でもいいですし、椅子の部屋は椅子でもいいです。
頭のてっぺんから腰までまっすぐに通るように座ります。
それでは10分から15分ほど坐禅をしてみましょう。

坐禅は休憩を挟んで2回、行われました。
パソコンを前に座禅をするという経験はなかなか慣れません。朝比奈さんのいう心得を思い浮かべながら、呼吸に集中すると、身体や心の声が聴こえてきて、気持ちがすっきりしてきました。
2回目が終わるころ、気持ちが落ち着いて「呼吸の大切さ」を感じられるようになりました。


 

5:ブレイクアウトルームでの参加者同士の対話

講話や座禅の前後に、参加者同士で対話するブレイクアウトルームが設けられました。
1回目のブレイクアウトルームでは、日本人の参加者の方々とお話しさせていただきました。
私の参加したルームの参加者は皆女性の方で、「鎌倉に行った気分なれてよかった」「家にいながら、読経を聴けることがないので新鮮でした」と言った意見が交わされました。
また、マインドフルネスのビジネスをしている参加者の方から「コロナの影響でお客様からの問い合わせが増えました」とのお話もお聞きしました。
新型コロナの影響は、私たち感じている以上に内観の需要を深めているのかもしれません。

2回目のブレイクアウトルームでは、英語圏の参加者の方のルームに参加させていただきました。
日本に住んでいる女性の方は「リラックスできて、よかった。お寺にいられるような感じがしました」とおっしゃっていました。
また、アムステルダムとオーストラリアから参加されたお二人の男性は「瞑想体験で内側と外側の価値が増した」「禅の伝統的メソッドを体験できてよかった」と嬉しそうにお話しされていたのが印象的でした。


 

6:身体をほぐすヨガタイム

今日のイベントは3時間の長丁場。
ずっとパソコンに向きあっていると、どうしても眼が疲れます。
そんな訳で、坐禅と対話タイムの後にヨガ体験の時間が用意されていました。
児玉美保さんによる椅子に座っていてもできるヨガの時間は、短くても簡単にできるヨガでとてもリフレッシュできました。
あと、画面の向こうで他の参加者の方が一緒に動いているのってなんか良いですね。


 

7:参加者からの質問と対話

こうした読経や坐禅やヨガを体験した感想や質問を元に、朝比奈さんと対話する時間が設けられました
質問は多岐にわたったので、私の心に残った参加者の方のご質問と朝比奈さんのご回答をご紹介したいと思います。

参加者の質問1:苦しみや悲しみがもたらす自己の変容を善きものとする分岐点はどこにあるのか?
一方、喜びや楽しみが悪しき変容をもたらすこともあると思いますが、気をつけなけらばならないポイントを教えていただければ幸いです。

朝比奈:難しいですよね。気持ちの持ちようなんですよね。
痛いとか辛いの先には「苦あれば楽あり」というけれど、「それはいつなの?」とも思われると思います。
それはいつかとは具体的には申し上げられないけれど、そんなときも大切になるのは「坐禅の呼吸」だと思います。
それが「いまを生きる」ことだと思います。

参加者の質問2:禅の精神に日本人はもっと触れる機会があってよいのではないかと感じます。
今の日本の閉塞感、課題などに対応するためにも、小さな子供のころから禅の精神に接する機会を増やすことは意味があることではないでしょうか?
仏教という宗教色をなくした形でもよいので、教育の中にも禅の精神を反映できないものかと感じていますがいかがでしょうか?

朝比奈:子どものときから物を大切にするのは、禅寺の生活のようにいいと思います。
ただ学校教育の現場で子どもへの教育として一宗教的なことを取り入れようとすると、否定的になる人もいると思いますので、宗教性は省いたほうがいいかもしれません。
禅宗の暮らしに基礎として伝わっているようなことを、老人の知恵のようにお話しするのはいいかもしれません。

参加者の質問3:禅の精神とは無駄を省きシンプルに生きることを目指すと仰ってくださったかと思います。
禅の考え方において、「無駄」とはどの様に定義されているのでしょうか。
生きていく中で自分自身が満足や幸福感を得る為に、「最小限の無駄」の定義は人と異なっても良いとお考えになりますか?

朝比奈:無駄の定義はないと思います。
何が無駄かと言ったら、食材だったら「捨てるんじゃないよ」ということだと思います。
さっきの知足と同じで、心が満たされることが大切です。
心の置き所をどうにかしないといけないですよね。
無駄の定義をして数値化することはできないので、体験で味わうことしかできないと思います。

参加者の質問4(英語圏の方のご質問):心配事があったり心が忙しい状態など、身体に強い感情あるときに、どのように練習(瞑想)したら良いでしょうか。

How do we practice with strong feelings, for example if our body is full of the feelings of anxiety and our minds are very busy, how do we practice?

朝比奈:坐禅は処方薬ではないから、難しいです
坐禅が全てを解消できるわけではありません。
私たちが修行中に言われたことは「成り切ってする」ことを教えられました。
食事をすることや掃除をすることを、成り切ってする。
「成り切ってすること」を大切に、一生懸命することではないかと思います。
余計なことを考えないで、一生懸命やりなさいということです。

どの質問も奥深く、深い意味が込められていました。
そうした参加者の方の迷いや悩みを含んだ質問に、優しく平易に応えてくださる朝比奈さんのお話がとても良かったです。


 

8:イベントを終えて 〜禅を体験し、対話することの意味とは〜

対話の最後に、三木さんからこれまでのZen2.0の活動のご紹介があり、終わりの挨拶がありました。
三木さん、宍戸さんに続いて、朝比奈さんが終わりの挨拶で次のようなことをお話しくださいました。

朝比奈:本日はありがとうございました。
このようなときだからこそ、普段からの大切な人とのつながりを大事にしてください。
インターネットというツールのおかげで、10年前にはできなかったつながりを快適に保てるようになった。
このつながりを大切にしていきましょう。

最後に画面越しに皆さんと手を触りあってご挨拶し、ドローンの映像が浄智寺上空に登って、小さくなっていく浄智寺を見下ろす映像で、イベントは終わりました。

3時間の長いイベントでしたが、これまで経験したどのようなオンラインイベントとも異なる鮮烈なイベントでした。

私は本当はオンラインイベントが苦手です。
画面越しに集中することができなくて、途中で参加したい意識を保てなくなることがこれまで度々ありました。
でも今回のZen2.0でのイベントは、様々な形で「体験」を重要視した作りになっていて、非常に好奇心が刺激されました。

小笠原諸島から、鎌倉でのイベントに参加できること。
鎌倉から配信されているイベントを通じて、世界各国の方と交流できること
そして、禅を学ぶことで「いま」を生きる仲間と繋がれること。

最後の朝比奈さんのお話にも「つながりを大切にしましょう」という言葉がありました。
「つながり」とは、自分の心や身体という内側の宇宙と、他の方々という外側の宇宙をつなげて広げていくことなのだと思います。
そして、過去と未来をつなぐ「いま」を大切にし、いまを生きる「自分」を大切にしていく。
その一つの手法として「呼吸」があり、「座禅」がある。
いまを生きることは、いまという瞬間に一生懸命に生きることだと改めて学び直したイベントでした。

素敵なイベントに参加できて、本当に楽しかったです。
朝比奈さん、三木さん、宍戸さん、イベントスタッフの皆さま、本当にありがとうございました。
7月以降のイベントも楽しみにしています。