2016年11月9日よりはじまった写真展「sign」は12日間の会期を終え、11月21日に幕を閉じました。
その間、延べ2000人以上の方にご来場いただきました。
2014年に新宿エプサイトで開催した写真展「Bonin smile」も2300人以上のご来場がありましたが、今回もとても多くの方にご来場いただけて、本当に嬉しく思っています。
誠にありがとうございました。
私はいつも内面を表現したいと思っています。
正確には私がなにを感じ、考えたかを表現したい。
写真は言葉にできない機微を表現することに長けたメディアです。
私の言葉にしきれない感情はカメラを持つことで昇華され、プリントとなって立ち現れます。
立ち現れるのはそのときどきの感動であり、絶望であり、希望であると同時にそのどれでもない「なにか」です。
写真に浮かび上がる私自身に眠る奥底の感情に、いつも私自身が驚かされています。
私はそうした意味で、私自身と私の持つ感情を作品化したいのかもしれません。
この写真展「sign」の準備中、2016年8月13日に私は自殺未遂をしました。
未遂に至る経緯は様々なものがあり、結果約10mの崖から飛び降りました。
奇跡的に私は無事で、家族や様々な友達や関係各位の尽力があり、助けられました。
それでも遺った心の傷跡は大きく、友人との信頼関係を失ったり、落ち込んだりもしました。
何度か写真展の中止を考えましたが、実際に中止にした場合の関係各所にかける負担を考え、今回の開催に踏み切りました。
未遂の影響で精神的に不安定になったり、体力が落ちたりといろんなハードルがありました。
それでも助けてくれた友達や家族の支えがあり、乗り切ることができました。
また韓国での大邱フォトビエンナーレのポートフォリオレビューに参加し、様々なレビュアーにいただいたアドバイスが支えになったことも大きかったです。
人間は喜びや哀しみや愛と共に生きています。
ときには怒り、憎みながら、それでいて、泣きながら、許しながら生きている。
そうした過程で傷つき、挫折し、繋がりの中で癒され、また歩き始める人間の弱さと強さを私は愛しています。
私がいま撮りたいのは人間の営みの中での回復で、私がこうして撮り、そして表現することそのものが私にとって、回復の過程そのものです。
心理学や精神医学の用語で「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」のことを「レジリエンス」と言います。
私は弱く、もろい人間で、過去の重みに耐えかね、折れてしまうことがあります。
それでも私は私の中にあるレジリエンスを信じようと思います。
人間は転んで怪我をすることもありますし、骨を折ることもあります。
それでも怪我はいつか治ります。痛みは残るかもしれないとしても。
であるならば、痛みと共に生きていく方法を探ることが、私に必要だといまは感じています。
なぜなら、私が痛みを感じるのは、いま生きているからです。
そして、私は生きていこうと決意したからです。
だからこそ、私は私の感じた痛みと共に生き、そして表現していこうと思います。