Hazuki Natuno

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夜の海、星の声

夜の海、星の声

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今夜も海に来た。
新月の一夜前の星空が、宝箱を倒したように綺羅綺羅と輝いている。
波は朝の海とは違い、静かでまるで星が囁いているような音がする。
少し離れた灯台の灯りが、煌々と私を照らしている。
対岸の扇浦のホテルの明かりも明るく私を照らす。
でも何よりも私の心を照らすのはこの上に広がる星の光だ。
私はどうしてこんなに夜の星が好きなんだろう。
そして海が好きなんだろうと我ながら思う。

喉が少し痛くて風邪気味のはずなのに、気がつけばこうして海に来ている。
何も明かりがないからノートに文章が書けないので、この文章は携帯の音声入力で書いている。
星明かりの中に、天の川が広がっている。
昼間はあんなに何度もスコールが降り、少し肌寒く感じるほどだったのに今夜はとても暖かで穏やかだ。

フィリピンの沖合に台風が発生したから、来週の海はもう少しうねりが入るだろう。
こうした凪いだ夜の海を見るのは、しばらくお預けになるかもしれない。
亀の産卵も終わり、夜の海を散歩する人が少ない。
遠くで笑い声が聞こえるけれども人の足音は聞こえない。
だからだろうか、この浜辺にいると私はとても解放される。
私はこの島の人々が好きなのに、人間関係でたまに息苦しくなる自分がいる。
その息苦しさはどうしても消えない。
私はどうしても人の中に居ると、溺れて死にそうになる。
だけどこうして星の海にいると、宇宙と繋がれるような気持ちになる。
それは本当に、本当に大切なことだ。

うまく話すことができないし、書くことはもっとできない。
だけど自分の中心にこうやって繋がれる夜の海での日々が続いてくれたら嬉しいと思う。