Hazuki Natuno

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「こんにちは」も「さよなら」も「ありがとう」も言わずに

「こんにちは」も「さよなら」も「ありがとう」も言わずに

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 ある人と、別れた。
 「友達になろう」と言ってくれたけれど、無理だった。
 その人を信頼できなくなったからだ。

 思うに信頼とはなんだろう。
 私にとって信頼とは「ありのままでいいよ」と認めること。
 そのままでいていい、と認めあうことだ。

 その人は良く言った。
 変わりたい、私を変えたいと。
 私は頷くことができなかった。

 変わることは、一見良いことに思える。
 だけど、本当に良いことはその人がありのままでいることだと思う。
 その結果、その人が変わりたいなら、変わればいい。

 相手のありのままを認めず、自分の思い通りに相手を変えようとする。
 それはすでに私にとって信頼ではない。
 ただ、苦しいだけの関係だ。

 人間と人間が別れるときは本当にあっけない。
 どんなに逢いたいと願っても、逢えなくなる。
 そのときはただ、結果を受け止めるしかない。

 「こんにちは」も「さよなら」も「ありがとう」も言わなくなって、すれ違い、それでも歩く。
 どこかで会えることを、微かに願いながら。
 二度と会えないことを、理解しながら。