Hazuki Natuno

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作りたい理由

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今日、日本に帰国します。
衝動的に日本を出て、計6ヶ国放浪して、ずっと作品のことを考えていました。
写真と写真以外の芸術作品を観続けて、ようやくぼんやりと私が次に作りたいものが見えてきました。
私はどうやら「回復」を次回作のテーマにしたいらしいのです。

私ははじめにコンセプトをはっきり決めて、考えて始める人間ではありません。
旅でも作品作りでも、とりあえずはじめて、動きながら考えるタイプです。
私のようなやり方は失うものが多い。
その失われる時間も私には必要らしいと気づきました。

私が被虐待者であることは何度か書いた通りです。
2月から虐待のトラウマを克服するために、トラウマ専門の高度なカウンセリングを受けています。
自分の傷に真正面から向きあうことは本当に難しい。
カウンセリングを受けはじめた2月から4月にかけてはずっと調子を崩していて、不安定な日々でした。

欧州を約1ヶ月放浪して、いま作っている作品のことばかり考えていました。
去年の夏、人生で最後(の予定の)自殺未遂後から取り組みはじめた作品です。
テストプリントを重ねていますが、まだ輪郭が朧げで、手探りのままでした。
それがスウェーデンのヨーテボリで出会ったある女性を撮ってから、自分の中ではっきりとした手応えが生まれました。

人間はなぜ生きるのでしょう?
そしてなぜ死んでいくのでしょう?
正確には「なぜ死ぬとわかっているのに生きるのか?」。すべて消えてしまうなら、無駄かもしれないのに、なぜ?
幼い頃から、死を願っていた私にとって、この問いは生きるうえで重要な命題でした。

私の中にはいま正解かはわかりませんが、答えがあります。それは「深化」するためです。
私たちは、死にます。必ず。ですが、社会の中で生きた証が僅かでも残ります。
「いま」がどんなに悪く、難しい状況でも、世代をかけてより良く、深く変わることができる。
そして私の次の世代になにかを遺すために、私は作りたいのです。

私が虐待のトラウマから回復しようとすることも、その過程を作品化することも、なんらかの形で、誰かの救いになると信じたい。
蜘蛛の糸のように細い望みを形にするために、私は作りたいのだと思います。
帰国後、まずはプリントにもう一度取り組みたいと思います。
皆さまに日本で会えることを楽しみにしています。