Hazuki Natuno

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永遠も絶対も存在しない、だけど

永遠も絶対も存在しない、だけど

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2020年11月29日、晴れ。
三日月山展望台で、彼を撮らせてもらった。
約束してから、何度か撮影が延期になった。
その果ての、撮影だった。

11月5日と11日に、大切な方が2人亡くなった。
どちらの方も、私にとってとても大切な方だった。
何度も泣くことを堪えた。
お通夜の夜も、葬儀の日も、賛美歌を聴いて、ようやく泣けた。

どんな物事も、終わる。
命も、恋も、人生も。
永遠も絶対も、存在しない。
そんなことを考えた、11月だった。

彼は、私が彼を好きだと知っている。
11月5日に大切な人を亡くした夜に、告白したからだ。
私はそのとき、哀しみ過ぎていた。
だから、心に秘密を隠しておけなかった。

彼は少し困った顔で、彼の事情を話してくれた。
一人の時間が大切なこと。人との付きあいを求めていないこと。
そうしたことを、話してくれた。
私は、静かに頷いた。

11月8日がお通夜で、9日はご葬儀だった。
葬儀の日、とてもよく晴れた。
棺の中のお顔は穏やかで、笑っているように見えた。
奥様も、ご家族も、皆泣いていた。私も、泣いた。

空は、よく晴れていた。
賛美歌は綺麗だった。
献花した白いカーネーションを、いまも想い出す。
私は彼を撮影させてもらいながら、あの日の光を想い出していた。

私は不思議な体質で、撮影した写真を全て覚えている。
前後のことは抜け落ちるのに、シャッターを切った瞬間のことをほぼ全て覚えている。
愛作さんの撮影も、ジョージさんの撮影も、全て覚えている。
一度撮ると、絶対に忘れない。忘れることができない。

いまの私は、知っている。
永遠も、絶対も、ないと。
どんな命も、終わる。
どんな関係性も、変わる。

だから、覚えていたい。
ずっと、覚えていたい。

ジョージさんを撮らせてもらえたときの、彼の笑顔。
愛作さんが私の自殺を止めに来てくれた日の、景色。
彼を撮影させてもらった、今日という日。
全部、全部、覚えていたい。

忘れたくない。

撮影を終えた後、彼に「手をつないでもいいですか」と聴いた。
彼は、また少し困った顔で、それでも手を伸ばしてくれた。
私たちは、手をつないで、山を降りた。
いまも私の右手に、あのときの温もりが宿る。

永遠も絶対も、存在しない。
だけど、願うことが叶うなら、
今日という日を、永遠に覚えていたい。
手に残る温もりに、そう祈った。