列車は南仏へと進む。
流れる車窓が眩い。
陽射しはゴッホの絵の具の色に似ている。
もうすぐ、彼が絵に描いた街、アルルに着く。
到着は始まりであって、終着ではない。
そうした感慨を持てることを幸せに想う。
旅とはなんだろう。
異国へ行くこと。
移動すること。
見知らぬ土地での新たな体験。
どれも魅惑的ではあるが、私の心地と違う。
優れた旅とは、内面への旅だ。
異なる土地、常ならぬ体験、新しい出逢いを通じて、新たな自分に気づく。
いや、気づく訳ではない。
見たことも、知ることすらなかった自己に変容していく。
つまり、成長していく。
その成長の過程こそが「旅」の本質であるように想う。
乾いた光に私は眼を細くする。
風は熱く、だが心地良い。
私はまだ知らぬ期待に胸を焦がし、深呼吸した。
この旅は、私をどこに連れて行くのだろうか。
私の心は、弾む。
アルルという名の目的地に、近づきながら。