Hazuki Natuno

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歌を歌う

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久しぶりにお気に入りの店にカラオケに行く。
私以外誰も客がいなくて、気がつけば店の人と歌い込んでいた。
気に入った曲、初めて歌う曲、ほとんど知らない曲。
どの曲も私の心を解放してくれた。

歌は良い。心を潤してくれる。
約1ヵ月こうやって歌うことがなかったから、私の喉は細く小さく固まっていた。
いちど固まってしまった喉を解すには歌うしかない。
喉は感情に直結しているものだと思う。

心が凍りつけば、体は死んでいく。
体と心を連動しているものだから、体が動けば心も動く。
そして心が動けばやはり体も開いて動いていく。
こうして歌い終わり家に帰ってみると、心が解放されると言うのはある種の奇跡だと思う。

星空の下で、あるいは波の前で、歌いたくなったときに歌うこと。
心の底から感情を音にこめて吐き出すこと。
私のように感情抑えがちな人間にとって、歌うという行為そのものがある種の救いだと思う。
なぜ歌うことを忘れていたのかそのことが不思議でしょうがない。

もう少し歌いたかったと思いながら後ろ髪を引かれるように帰宅する。
そして、また歌いたいと思う。
こんな夜はいつもより少し深く幸福に眠れる、そんな予感がする。