Hazuki Natuno

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一緒に生きよう  〜「ありがとう」という薬 〜

一緒に生きよう 〜「ありがとう」という薬 〜

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 こんにちは、夏野葉月です。
 今日は私を支えてくれた薬を紹介したいと思います。
 その薬の名前は「ありがとう」と言います。

1:心の傷と痛みと手当てするには

 人生にはどうしても避けることができない困難が降りかかることがあります。
 戦争、飢餓、貧困、失業、いじめ、犯罪、病気。
 家庭内の不和もその一つです。
 私は小さな頃から家庭で虐待を受けていて、父から性的虐待を、祖母から身体的虐待を、母から精神的虐待を受けていました。
 幼い頃はものを知らず、自分の身の回りに異常なことが立て続けにおきていることに為す術がありませんでした。
 成長してからは心の痛みに目をそらし、問題を先送りにすることで生きていました。
 ただし、私の心の傷への対処法は「痛みを無視する」というもので、お世辞にも良い方法とは言えませんでした。
 なぜなら身体の傷はほっておいても化膿するだけで治りません。
 同じように、心の傷も手当てしなければ治らないからです。
 もちろん、傷をすべて消すことはできません。
 なぜなら、傷とは「生きてきた証」そのものだからです。
 傷が痛むのは生きているからで、死んでしまえば身体も心もなにも感じることができなくなります。
 幸い、私たちは生きています。
 だからこそ、失恋や失業、離婚や他者との不和といった人生のストレスを痛みとして感じることができます。
 痛みは大切ですが、生きていくためには傷を癒し、手当をする必要があります。
 一つの例として、私を支えてくれた薬を紹介したいと思います。
 その薬の名前は「ありがとう」です。

2:なぜ「ありがとう」が薬になるのか

 なぜ「ありがとう」という言葉が薬になるのでしょうか。
 それは、感謝の本質とは「積極的な認識の変化」だからです。
 私たちは他者に自分にとって喜ばしいことをされたとき、感謝します。
 感謝とは他者に対する「ポジティブな感情表現」でもあり、同時に「相手の行為を肯定し、好意的に受け止めること」でもあります。
 同時に「相手の生き方に基づく価値観による行動を肯定すること」でもあります。
 感謝の特徴は、感謝は誰かの行動に基づく受動的な肯定ではなく、自分の内面から内発する積極的な肯定だということです。
 「ありがとう」という言葉には感謝した自分と感謝された相手の双方を幸せにする不思議な力があります。
 それは自分の中の「あなたの行為が嬉しい」というポジティブな気持ちを肯定し、同時に相手の行動と行為を肯定するという二重の肯定が一つの言葉の中に含まれているからです。

3:「ありがとう日記」をつけてみよう

 では、どのように「ありがとう」という薬を使えばいいでしょうか。
心理学博士であり、ハーバードで教鞭をとるタル・ベン・シャハー氏は著書「ハーバードの人生を変える授業」という本の中で「感謝する」というワークを紹介しています。
 今回はその本のワークを私流にアレンジして紹介します。

 1.日記か手帳を用意します。自分の書きやすいものでかまいません。
 2.1週間毎日、今日「ありがとう」と感じたことを5つ書きます。
  5つ書けないときは1つでも2つでも、5つ以上思いつくときは書ける限り書きます。
 3.「ありがとう」と書くときに、感じた相手や相手の行動とそのときの感情を思い切り味わいます。
 4.もし、一日に一つもありがとうと感じることができることがなかったら、あえて一番つらかった出来事とその登場人物に「ありがとう」と書きます。
 5.「ありがとう」と書いたあとにかならず「なぜならば……」と書き足します。
  その後になぜその人に「ありがとう」と感じたのかその理由を書いてみてください。

 この「ありがとう」のワークを毎日続けます。
 もちろん、落ち込んでいるとき、疲れたとき、日記を書き忘れるときもあると思います。
 そのときも忘れず、気長に続けてください。
 大事なのは5つ書くことです。
 なぜなら、5つ「ありがとう」と感じることを毎日探すと、人間はとてもたわいないことでも感謝をすることができることに気づくようになるからです。

4:まとめ 〜大切なのは自分と相手を肯定すること〜

 人間はどんな過酷な問題があってもその出来事そのものを肯定し、そこから学ぶことは可能です。
 ただし、大切なのは感情を肯定することです。
 辛い出来事があったとき、その痛みを押し殺すのでもなく、つらいことを「つらい」と肯定することも大切です。
 その上で「ありがとう」と感じられる心の中の感性を探します。
 ネガティブになってしまっている心の中にポジティブに物事を受け止める心の中の光を探します。
 そして「ありがとう」とあえて言葉にすることで、自分と相手の双方を肯定します。

 人生には、どうしても感謝できないつらいことや苦しいことがあると思います。
 ですが、そのつらく苦しい出来事をあえて肯定することで、自分自身の奪われた力を自分の心に取り戻すこともできます。
 もし、どうしてもなにも「ありがとう」と書けないときは、あえて自分に「ありがとう」と書いてみてください。
 例として、こんな風に書いてみてはいかがでしょうか。

「私にありがとう。なぜならば、生まれてきてくれたから」と。

【参考文献】
タル・ベン・シャハー「ハーバードの人生を変える授業」大和書房